◆ 拠点開設の経緯
2011 年 3 月の東日本大震災後、大阪大学の核物理研究センターが中心となり、震災直後から避難者に対するスクリーニング調査や子供たちの甲状腺被曝調査などの支援活動、土壌調査などを行ってきました。これらの活動が契機となって2016年に始まった福島環境放射線研修は、本学が主催する学生向けの 教育プログラムで、福島第一原子力発電所事故後の福島県における環境放射線の状況を、自然科学面と 社会科学面の両面から学ぶことを目的としています。学年や専攻を問わず参加でき、留学生や他大学からの参加者も受け入れています。現地での研修は、放射線測定や被災状況の視察、地元住民との意見交 換などを通じて、放射線に関する正しい知識と、そこから派生する社会問題についての理解を深めるものであり、研修開始当初の2016年は参加学生が 10 名程度でしたが、現在では200 名を超えるまで に発展しています。 福島環境放射線研修は、飯館村、大熊町、双葉町 と連携して実施しています。このたび、大熊町から 大熊町連携大学等研究・支援センターを設置するにあたり、本学へ貸与いただけると申し出があり、「大阪大学福島拠点」として整備するに至りました。
◆ 今後の展開
2024年8月~9月にかけて、新設された常設拠点を中心に、環境放射線研修を実施しました。これまでは常設の拠点がなかったため、当研修は年に2回程度の実施に留まっていました。今後は、この常設拠点を活用し、研修の規模と頻度の拡大を図っていく予定です。 さらに、この拠点は現地での教育活動にも貢献します。大阪大学では、小中高生を対象に未来の研究者を育成する「めばえ適塾」を実施してきました。この取り組みは福島県の地元自治体からも高い関心を集めています。今後は、この「めばえ適塾」を現地の拠点でも展開することを構想しています。 この拠点を活用し、本学の教育・研究活動をさらに活性化させるとともに、他大学・機関との連携による新たな取り組みを進めていきます。これらの活動を通じて、東日本大震災という未曽有の災害からの復興に、様々な面で貢献していく所存です。